その日が来るまで

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「もー遅いよパパ!」 「いやぁ、すまん。会議が長引いてな」  そう言って、パパは流れる汗をハンカチで拭きながら、あたしの真正面に座った。相変わらずシワシワのスーツ姿。みっともない。 「なんだ、ちえみ。何か頼めばよかったのに」  パパがテーブルの隅に立てかけてあったメニュー表をパラパラと捲る。目を止めたページは、あたしがもう幾度となく見たページだった。 「だって……あたしお金持ってないし、パパ来なかったら最悪じゃん」  あたしの言葉にパパはフッと吹き出すと、優しい目をして言った。 「なんだなんだ、パパが約束破ったことなんてあったか? ……あ、すみません、クリームソーダとアイスコーヒー」 「……ないけど」  パパは勝手に『クリームソーダ』を頼む。いつもだ。一番最初に『好きなものを頼め』と言われてこれを指さした時から、パパの中であたしの『一番』がこれになった。 「それにしてもよく迷わなかったなぁ」 「迷うわけないじゃん。あたし、もうすぐ中学生だよ? このくらい、ラクショー」 「ああ、そうか、そうだよな」  困った顔で笑うパパ。目尻が下がって情けない顔になる。あたしはその顔が好きじゃなかった。なんだか気まずくなって、あたしはパパから視線を外した。
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