その日が来るまで

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 パパはアイスコーヒーにシロップを二つも入れて、ストローで掻き混ぜている。 「ねー、甘過ぎない?」 「甘いのが好きなんだよ」 「糖尿病になっても知らないよ」 「ははは! それは勘弁してほしいなぁ」  その言葉とは裏腹に、パパは大きな声で笑った。何がそんなに嬉しいんだろう。  でも本当に、パパは最近太ったと思う。糖尿病になるのは時間の問題かもしれない。もっと、気をつけて欲しいのに。パパのお腹の膨らみを見て、あたしはため息をついた。  昔はもっと細かったのに。スマートで筋肉質で、なんでもできる。そんなパパがあたしは自慢だった。  あたしはパパと出かけるのが好きだった。我が家は役割分担性で、つまり、勉強はママ、アウトドアはパパ、怒るのはママ、慰めるのはパパ、という具合に担当がきっちり決まっていた。  ママからは算数や理科を教えて貰ったし、パパからは風の心地よさや雪の冷たさ、そして山の優しい緑や海の深い青を教えて貰った。  よく肩車もしてもらった。今よりもっとチビの頃、高いところが見たいとねだるあたしを、パパはひょいと抱き抱えて肩の上に乗せた。力を入れたらこんもりと力こぶができた逞しい腕は、今ではすっかり見る影もない。  
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