その日が来るまで

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 パパは忙しい。三年前にカチョーになってから、ありえないほど忙しくなった。  それまで土日とも休めていたのが、休めなくなった。休日も、お仕事関係の電話がひっきりなしにくるようになった。オツキアイでゴルフも始めた。  そうやって、パパの生活が仕事でぎゅうぎゅうに押しつぶされていった。そして、あたしとパパの時間はなくなったんだ。あたしだけじゃなくて、ママもだったけど。  パパが席を立って、またもや手持ち無沙汰になったあたしは、クリームソーダのストローをぐるぐる回した。もうすっかり溶けて形がなくなってしまったバニラアイス。折角ならアイスの形のまま食べてあげたかったのに、可哀想なことをしちゃった。でも大丈夫。こうやってぐるぐる回して、ソーダと一体化させるんだ。そうすれば、中途半端な溶けかけアイスは、新しい形に生まれ変わる。  あたしとパパも、『新しい形』になったんだ。あたしたちは何も変わらない。あたしたちを取り囲むものが変わっただけなんだ。  そうだよね? パパ──  その時、今まで気にしていなかったBGMが急に耳に入ってきて、あたしの心臓がドクンと跳ねた。  知っている曲だったから、ということもあるけどそれだけじゃない。  この曲は、パパとママと三人で最後に観た映画の主題歌だった。
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