その日が来るまで

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 さっき見たガラス向こうの親子連れと、当時のあたしたちがダブる。あたしたちもああして、手を繋いで出かけたんだ。  大ヒットしていた映画は言う程でもなくて、でも主題歌だけはとてもよかった。ポップコーンはバター醤油。パパはあたしと半分こって言ってたのに、半分以上食べたんだ。映画が終わった後、仕返しに途中むせそうになりながらも、残っていたパパのコーラを一気飲みしてやった。そんなあたしたちを、ママはにこやかに見ていた。  それまで平気だったのに、急に目の奥が熱くなった。世界がだんだんとぼやけていく。ちがうよ、あたし、可哀想なんかじゃない。そんなんじゃないんだ。  必死に伸ばした右手で、テーブルの隅に追いやられていた紙ナプキンを取る。それを目頭にあてると、ゴワゴワした硬い質感で、余計に目が痛くなった。  湿って少し柔らかくなったそれを、丸めてテーブルの上に転がす。すん、と鼻をすすった頃、パパが戻ってきた。 「──ちえみ」  椅子に腰掛けたパパが、低い声で呟く。これは、パパがあたしをたしなめる時の声だった。一瞬、泣いたのがバレたのかと思ったけど、そうじゃなかった。 「ちえみ、もう電車の時間まであと十五分しかないじゃないか」
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