その日が来るまで

　パパめ、と思った。電話した後にこっそり調べたんだ。

「ほら、クリームソーダ、早く飲んでしまいなさい」

「………………」

　やだよ。せっかくゆっくり飲んでたのに。

「なんでもっと早く言わなかったんだ」

「………………」

　言ったらパパ、帰りの時間気にするじゃん。

「ママだって心配するだろう？」

「………………」

　一日くらい、いいよ。あたし、次の電車でもそのまた次の電車でもよかった。

「……ごめんな、パパが遅れて来たから……。でももう、帰ろう」

「………………」

　なんでそんな事言うの。もっといろいろあたしに聞いてよ。聞きたいこといっぱいあるでしょう？

「──ちえみ、今でも……今でもまだ怒っているか」

「え──」

　それは、不意打ちの質問だった。無言を貫こうと思っていたのに、思わず声が出てしまった。

　あたしはパパの言う通り、まだ半分以上残っていたクリームソーダを、ストローで一気に吸い込んだ。途中、やっぱりむせそうになる。ねぇ、パパ。あたし、本当は炭酸苦手なんだよ。