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「男は頭のよさでもないよ」
「あいつ暗いじゃん!根暗。話も面白くないよ」
「そんな人、世の中たくさんいるわ。それも男に関係ない」
「じゃあ!何?なんなのよ!」
あんな根暗、ちびデブめがねの何がよかったのだ。
北原チサトは目の前に公園の遊具に向けていた目をすっと細めた。
田邊のことを考えているのだろう。表情が柔らかく、優しいものに変わった。
「田邊くんはね、優しい。とてもやさしいんだよ」
それだけを北原チサトは言った。
「えっ。それだけ?」
聞き返すと、チサトは顔をこちらに向けた。
「大切なことよ」
優しい人だって世の中たくさんいる。
そう言いたかったが、あまりにチサトが真剣なのでミユキはそれ以上何も言えなかった。
そうか。北原チサトと田邊ヨシオか。
二人が並んでいるところを想像する。
美人委員長とクラスの1、2を争う根暗男。
ダメだ。全然似合ってない。
そのあまりの釣り合わなさに思わす笑いがこみあげ噴き出しそうになる。
「ちょっと、何笑っているのよ」
にやにやの止まらないミユキを見て北原チサトが眉をしかめる。
「ごめん。なんか面白くって」
面白い。こんな面白いものが同じクラスに転がっていたなんて。
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