夏の夜にはバニラアイス

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高梨ミユキは急にアイスクリームが食べたくなった。 それも夜、寝る前に。 ミユキの性格上、己に沸き起こった欲求には素直に従うことにしている。 しかし冷凍庫を開けるとアイスクリームはなかった。 諦めて寝なさいと母には言われたが、一度食べたいと思ってしまったら、ミユキの脳はアイスクリームを食べるまで落ち着かない。 アイスクリーム。アイスクリーム。 あの、冷たくて甘くとろりと溶けるなめらかな舌ざわり。 夏の夜にはバニラアイス。これに限る。 アイスクリームを食べなきゃ今夜は寝られない。 ということで、ミユキは夜中に自転車で近くのコンビニまで走ることにした。 家の近くのコンビニまで自転車で走って10分。 今は夏。夜道を自転車で走っても寒くない。 この前期末テストが終わったばかりで、あと数日で夏休みだ。 ミユキは今年の春に高校に入学して、新しいクラスにもすぐに馴染めた。 ミユキは自分で言うのもなんだが、かなり社交性の高いほうだと思う。 誰とでも積極的に話もできるし、人のこともよく見ている。 少し話をしてこの子はこういう性格なのだとつかんだら、相手が求めているであろうことを言って、相手を喜ばせる。 相手の性格を理解して上手にコミュニケーションをとる。 ミユキは新しいクラスでうまく立ち回って、学校生活を送っていると思う。 けれど正直、面白いと思ってはいない。 面白くなくても、それでもその場に合わせるためにとりあえずミユキは笑っている。 本当はもっと面白い、自分を楽しませてくれるものがあるはずだと思いながら。 心のどこかで今よりもっと面白いことはないのかなといつもミユキは思っている。
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