夏の夜にはバニラアイス

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夜道を自転車で走り抜け、近くの公園を通りかかったときだった。 公園にいる人影に見覚えがあり、思わずミユキは自転車を止めた。 それはミユキと同じクラスは北原チサトだった。 チサトはクラス委員をしている子で、成績優秀品行方正、そして何があっても表情を変えない鉄仮面で知られている。 「委員長、何しているんだろう」 公園の外からミユキは彼女の様子を見守った。 チサトは何をしているでもなく、公園に一人たたずんでおり、時折夜空を見上げている。 ミユキは彼女に近づいて話しかけるかどうか迷った。 実は北原チサトはミユキがクラスでただ一人仲良くなれていないクラスメートだ。 ミユキは誰とでも話す。もちろん、同じクラスの彼女とも話をしたことはある。 「北原さんって頭いいんだね」 休み時間。委員長の北原チサトがクラス全員のノートを集めて職員室に運ぼうとしているときだった。ノートの山が崩れて床に何冊が落ちたので、ミユキはそれを拾うのを手伝った。せっかくの機会だから、ここで彼女と仲良くなっておこうと思ってミユキは話しかけた。 「モリモっちゃんから聞いてさ。あ、モリモっちゃんって、森本ナツキね。北原さんと同中だったんでしょ?北原さんは中学からずっと頭よくて成績トップだったって聞いたよ。すごいね」 話しかけながら、拾ったノートを渡すと、彼女は小さく「ありがとう」と言って受け取った。 その表情は相変わらず無表情のまま。感情がちっとも表に出ない。 けれど不愛想だか彼女は美人だ。目鼻立ちは整っていて、肌も白い。 近くで彼女の顔を見て、全然日焼けしてないなと思いながら、ミユキは話をつづけた。 「私、バカだからさー。全然勉強できなくて。っていうかしてないんだけど。どうやったら北原さんみたいに成績よくなるのかなと思って」 彼女はノートを抱えたままじっとミユキの目を見ていた。 黒く大きな瞳はなんの感情もあらわさない。
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