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ミユキは予想していた。
頭のいい秀才タイプにはいかに自分がバカかを示して、頭の良いあなたのことを尊敬している態度をとれば、高いプライドをくすぐって喜ぶはずだ。
そうやって持ち上げておけば、相手は気をゆるしあわよくば、バカなミユキのことを気遣ってくれてテストに出そうなところのヤマを教えてくれる。
頭の良い人のヤマ勘はよくあたる。
ミユキは北原チサトとも仲良くなって、彼女を利用しようと思っていた。けれど彼女の返事はミユキの予想を裏切った。
「勉強してないなら、成績悪いのは当然でしょう」
無表情のまま冷たくそう言うと、彼女はまっすぐにミユキの目を見ていった。
「勉強すれば、できる。それだけだよ」
予想していた反応と違って、ミユキは驚いて言葉をなくした。
頭が良いことを褒めたのだから、普通、そんなことないよ、と謙遜の言葉が返ってくると思っていたのだ。
それを誉め言葉を黙って受け取り、なおかつミユキに冷たく言い返した。
変わった子、なのかな。
それから彼女の様子をクラスで見ていて、ミユキは思った。
彼女は基本、クラスで一人だった。
あまり人と話さない。
けれどまったく話をしないわけでもなく必要があれば自分から話しに行く。
そして一人でいることを気にした風もない。
堂々と一人でいる。
あまりに堂々と一人でいるし、しかも頭の良い委員長の雰囲気が人を近づけさせず彼女は一人でいてクラスで浮いていない。
むしろ一人が当たり前のようになっている。
珍しいタイプだな、と思った。
けれどミユキの処世術が通用しないのは困ったものだ。
北原チサトとは仲良く話すことができないまま今に至る。
やっぱり、話しかけるのはやめておこうか。でも夜の公園で委員長が何をしているのか気になる。
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