夏の夜にはバニラアイス

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「アイス?」 冷静に聞き返してきたチサトにミユキはえへへと笑った。 「なんか、無性に食べたくなっちゃって。だからコンビニに行こうと思って」 「じゃあ、早く行ったら?」 相変わらず、委員長は冷たい。事務的にそっけなく話すチサトにミユキは少し傷ついた。せっかく同じクラスなのだから、もう少し友好的に話してくれてもいいのに。 「うん。そうなんだけど。委員長は?何してるの?」 「私は、あれよ。あの…天体観測」 「へえ」 そうなんだ、とつぶやきながらミユキは空を見上げたが、ここは都会。 星なんて本当にまばらにしか見えない。のっぺりとした暗い夜空は広がるばかり。 こんなところで天体観測なんて、嘘だろうとミユキは思ったが、委員長はミユキから顔をそむけたまま。これ以上何も言ってくれそうにない。 行動は怪しいけれど、これ以上追及したら本当に嫌われてしまいそうだし、あきらめよう。 「それじゃあね。委員長。夜遅いし、早く帰りなよ」 そう言うとミユキは手を振って、公園を後にした。 公園から出るときにもう一度、委員長を振り返ったが、彼女はやはり一人、公園でたたずんでいる。 「やっぱ、委員長、変だな」 自転車をこいで、コンビニに向かいながらミユキは思った。 先ほどの北原チサトは変だった。いつもまっすぐに人の目を見て話す彼女が、妙に視線をそらしていた。 きっと彼女は嘘をついている。でも嘘をついて、夜の公園で一人、一体何をしているのか。 自転車をこぎながら空を見ると、月が見えた。今日は綺麗な満月だ。 「綺麗なお月さまだな」 星はあんまり見えないけど、月は明るくまんまるで、とても綺麗だ。 そうか、今日は満月だったんだ。 そう思ったときだった。 「そうか!わかった!」 唐突に北原チサトの行動の理由が分かって、ミユキは思わず急ブレーキをかけた。
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