夏の夜にはバニラアイス

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顔を赤くして黙りこんだまま、スカートのポケットに手を入れ、何かを取り出した。 それはとても小さなシルバーの指輪だった。装飾も何もないシンプルな指輪。 チサトはそれを手のひらに乗せて、ミユキに見せた。 「綺麗な指輪だね」 ミユキがそう言うと、チサトは黙ってその指輪を自分の左の小指にはめた。 そして、こらえていたものを吐き出すように、大きなため息をついた。 「ああ。なんで見られちゃうかな。それもよりによってあなたに」 そういうと彼女は横目でミユキを睨んだ。 珍しい。 鉄仮面の仮面が外れてはっきりと怒りの感情が北原チサトの顔に出ている。 「え、私だとダメなの?」 「当たり前でしょう」 彼女が怒った声をあげてミユキの目を見てはっきりと言った。 「だって、あなた性格悪いじゃない」 あまりにも直球な言葉に、ミユキは失礼なことを言われたというのに不思議と傷つくことも怒ることもなかった。 むしろ、その率直さに感心した。 「へえ。私って性格悪い?どちらかというと誰とでも話して社交的だと思うけど」 「でもそれって計算でしょ?本当は人のこと見下してる」 さすが委員長。彼女の頭がよさは勉強ができるだけではないらしい。 けれどそれは今言ってよいことなのだろうか。弱みを握られたミユキに向けて言う言葉ではないと思うけど。 ミユキがそう考えている間にも、「ああ」と彼女は頭をかかえてうなだれている。 ちょっと、面白いかも。 いつも無表情で淡々としている委員長がこんなにも感情を露わにしている。 「ね、ここまで知ってしまったんだから、もう教えてよ」 ひょいと委員長のほうへ体を傾けて尋ねる。 「誰が好きなの?」 月に祈ってしまうほどに委員長が好きな人。 一体誰なのだ。
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