目覚めない君へ

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 君に語る夜が好きだ。昼間は苦手。パパのことは大好きだけれど、勉強勉強五月蠅いんだもの。勉強しなさいってパパが時々怖い顔をするから昼間は苦手。でもね、覚えることは嫌いじゃない。知識がどんどん集まってくるのが面白いんだ。  今日の昼間、パパにこのことが知られてしまった。君に会っていることが。ちょっと叱られてしまった。余計な体力を消耗するんじゃないって。疲れたらすぐ休めば大丈夫だよ。  僕はうなじを撫でる。  パパは僕のことが大好きだと言うけれど、君のことの方が好きなのではないだろうかと時々思う。好きでないのなら、こんなにも長い間動かない君をどこかに捨ててしまっているだろうと思うからだ。  話をしている途中で僕は咳き込んでしまった。  科学と共に医療技術も昔より発展している。失った体の組織の再生だけでなく、体の部品を機械と入れ替える方法も主流だ。全身が機械のお年寄りを見たことがある。しかし、パパは自分の息子には生身でいてほしかったらしい。ロボットを作っているくせにおかしなことだと思うけれど、普段機械と触れ合っている分、家では柔らかさに包まれたかったのかもしれない。それが結局こんなことになっているのだけれど。  僕は激しく咳き込んで、君が眠るカプセルに手をついて体を支えた。体の奥が熱くなっているようで、少しふらふらする。早く部屋に戻って休むことにしよう。  壁に手をつきながら、僕は君の部屋を出た。  また、夜に会おう。
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