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目覚めを待つ僕は
僕の父は立派な研究者でした。しかし、ロボットの開発をするくせに自分の息子を機械にすることは嫌だと言いました。その結果、重い病にかかった僕は寝たきりの状態となり、特殊なカプセルの中で命を繋ぐこととなりました。僕が眠っている間、父は僕が目覚めた時のためにと人工知能を載せたロボットを一体作ったそうです。研究ばかりの父に愛想を尽かせた母が何年も前に失踪し、父の研究を手伝って家に引き籠っていた僕はいつも一人でした。そんな僕のために、父は友人を作ってくれたのです。
しかし、僕はその友人と会話をすることができませんでした。
目を覚ました時、カプセルの傍らに僕と同じくらいの歳と思われる少年が穏やかな笑みを浮かべながら倒れていました。後頭部からは千切れた充電コードが伸び、うなじにはスリープモードに切り替えるためのスイッチが付いている少年です。胸の辺りにはぽっかりと穴が開いていて、中の機械が見えていました。
そして、僕の胸には微弱な電気を流す機械がくっ付いていたのです。それはもしもの時のためにと、父が彼に付けた機能でした。弱り切った僕の心臓を、彼のメインモーターが助けるようにと。
開発の途中にもかかわらず真夜中に僕の部屋を訪れていた彼は、少しずつ壊れ始めていたそうです。人工知能を載せているのだから自分のことも分かっていたはずなのに。彼は本当に、僕と話すことを楽しみにしていたのでしょう。そして最期に、僕を救った。
日が昇ってから帰ってきた父は僕を抱きしめて喜びましたが、動かなくなった彼を見てとても悲しそうな顔をしました。二人の息子。片方を、失ってしまった。
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