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とは言っても、木曜の一回戦と、金曜の二、三回戦を勝ち抜かないと、土曜の試合には進めないわけで。
「葉児。きょうの試合、すげ~気合入ってたな」
県立体育館から出ると、橋本がハァと、タオルでこめかみをぬぐった。
タイルを張りめぐらされた体育館の外壁が、夕日を浴びて、ギラギラにかがやいている。
「先輩もおまえのこと、ほめまくりだったじゃん。サポートにまわるときは、ちゃんとまわってるし。と思えば、速攻かけるし。点取らなきゃならないときは、点取り行ってるし。バランス取れてたもんな~。やっぱ、時期部長はおまえだな」
「……部長は、求めてねぇけどな。まぁ、オレの実力にかかれば、三連勝くらい当然だな」
エラそうにふんぞり返って、ジャージのそでぐちをたくしあげていると、スポーツバックでスマホが鳴った。
出して画面を確認すると、綾からのラインだった。
なんだ?
画面の文字を目で追って。とたん、頭がくらっとゆれた。
のぼせたように、体中が熱くなってくる。
「……葉児?」
歩みをとめたオレに、橋本がふり返った。
「……ああ。悪い。ちょっと遅れて帰る。先、バス乗っといて」
「え? うん。どした?」
「いや、なんでも。あしたの試合も、がんばろうな」
「だな! 次で勝てば、三位決勝戦に行けるもんなっ!!」
橋本はニカっと笑って、バス停についたバスに乗っていく。
愛想笑いを返して、オレは急に重くなった両腕をおろした。
三回戦は無事突破した。
あしたは土曜日。綾が、試合を見に来る日。
……なんで……?
空の赤みがうすくなって、夜空に飲み込まれていく。
ひとけの消えた体育館の植え込みに、オレはひとりでしゃがみ込んでいた。
スマホの画面を何度見返しても、別の文字にはかわらない。
《ごめんね、ヨウちゃん。ママがあした、急に地元の撮影入れちゃった。試合見に行けない》
街灯がともる。カラスがねぐらに帰っていく。
なのに、頭がガンガン痛くて、立ちあがれない。
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