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「ウケる~! 中条がでこに、冷えピタはってる~」
人んちの部屋に入るなり、小池がゲラゲラと笑った。
「……うるさい。だれでも熱出れば、はるだろ?」
つぶやいたけど、声に力がこもらない。
なさけなくなって、オレはベッドの中で窓の方へ顔を向けた。
「わ。すねちゃった。ごめん、ごめん。これお見舞いの品ね。ゼリーとリボビタ。ここ置いとくね~」
小池がコンビニ袋を、オレの部屋の勉強づくえの上に乗せる。
「……あ、ああ。悪い」
「ったく。なにやってんだよ、葉児。熱出して試合欠席とか。ありえね~だろ?」
小池について部屋に入ってきた橋本が、ため息をついて、スポーツバッグをゆかにおろした。
「あ。橋本。それで、試合は?」
「男子は四回戦で敗退。けっきょくのところ、おまえがチームを動かしてたとこ、あったからな。先輩たち、怒ってたぞ」
「……え?」
「バイトのせいで、試合当日に体調くずすとかねぇだろって。そんなんじゃ、時期部長はムリだってよ。……たぶん、部長はオレに決まると思う」
「……そうか」
「……葉児、なんか……悪いな……」
橋本はカーペットにあぐらをかいて、そった横髪をかいた。
……こいつ、やさしいな……。
オレは熱で生あたたかい息をはきだした。
「気にすんな。こっちは部長なんかなる気ねぇって。そう、何度も言ったろ?」
「……うん。けどさ……」
「けっきょく、モデルのカノジョには、試合見せられなかったんだね」
小池の言葉のほうが胸をさした。
「中条はりきってたのにね。当日体調くずすなんて、ざんねん……」
「……まぁな」
オレはまた、窓の方へ視線をそらした。
どっちにしろ、綾は来られなかった。
オレががんばっても。がんばらなくても。
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