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「……夢……?」
朝日が窓から差し込んでくる。
ベッドから起きあがって、オレはまだぼんやりしている頭をかいた。
「夢……だよな……」
気づけば、冷えピタがひたいから、べろんと半分はがれている。
なんか、えらい自分につごうのいい夢を見た。
綾がオレをたずねてきて。「本当はいつもオレに会いたかった」なんて言ってくれて。
胸がきゅ~としめつけられて、さみしさがこみあげてくる。
「夢って……なんだよ……。しょせん夢なら、見ないほうがマシじゃねぇかよ……」
スマホの音がした。
「あれ?」と部屋の中を見まわして、金曜の夜から、スマホをスポーツバッグにつっこみぱなしだったと思い出す。
画面を開いて、ドキッとした。不在着信がならんでいる。
……綾から……。
金曜の晩から、きのうの夕方まで。十件近くも。
着信は、きのうの夕方の四時でとまっていた。
画面をタッチして、ラインを表示させる。
《ヨウちゃん、ごめんね》
《話できる?》
《試合、がんばって》
《仕事、終わったよ! これから試合見に行くね》
《ヨウちゃん、今、どこにいますか?》
ボロッと画面に涙がこぼれた。
こっちが、なにも知らないで寝ている間。
綾はずっと、オレを想って、動きまわって……。
画面に、新しいメッセージが表示されている。
《これから、東京に行ってきます。ヨウちゃんはゆっくり休んで、早くよくなってね》
「……綾……。オレ、『行くな』って言ったじゃねぇかよ……」
涙がぼろぼろこぼれて、ほおを伝っていく。
肩を震わせて、ひとりぼっちで、部屋のゆかに座り込んで。オレはバカみたいに、むせび泣いた。
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