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雪がふわふわと舞ってくる。
車通りの消えた、冷たいアスファルト。
黒い切り絵のような浅山の山並み。ぽつん、ぽつんとともる街灯の明かり。
綿のように地面をおおっていく雪に、足あとをつけながら、家の前の坂をどんどんのぼる。
ポケットの中の右手が、小さな箱にふれた。
――葉児は、和泉とこの先、ずっといっしょにいる覚悟はないわけ?――
誠の声がよみがえってきたとたん、胸がつぶされそうに痛んだ。
――あるんだったら、その想いを形にしてみるのは、葉児の自由だよね。受け取る、受け取らないを決めるのは、和泉なんだからさ――
オレの……想い……?
オレは……綾に自分の想いを伝えたか……?
白い息をはいて、ふり返る。
アスファルトの急な坂が、下の住宅街に向かって、すべりおりている。
オレはまだ……伝えてないっ!!
足が大きく前に出た。
坂の下へ歩き出す。その足が速くなる。かけだす。
坂の下の交差点で、信号は青にかわっていた。
横断歩道の向こうから、だれかが走ってくる。
信号をわたってくる。
「ヨウちゃんっ!!」
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