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信号をわたりきると、綾は、全身をのりだしてさけんだ。
「あたし、ヤダっ!! あたし、ヨウちゃんと別れたくないっ!!」
ズンと声が胸をついた。
「あたし、ヨウちゃんと笑ってたいっ! 浅山を走りまわって、妖精を追っかけたいっ!!
おとなになったら、ヨウちゃんちのカフェを手伝って、ヨウちゃんに『いってらっしゃい』と『おかえりなさい』のキスをするのっ! カワイイ赤ちゃん育てて、ずっとずっとたって、おじいちゃんとおばあちゃんになったら、ヨウちゃんとふたり、縁側でお茶を飲むんだっ!! 『ああ、あたしたちの人生は楽しかったね』って話すのっ!!」
「……なんだよ……その夢……」
ほおを涙が伝って落ちた。
「綾……おまえそれじゃ……中学生のころと……ぜんぜん頭のレベルかわってないじゃねぇか……」
「いいんだもん~……」
綾の両目から、ぶわっと涙がこぼれた。
「あたしは、アホっ子だから、これでいいんだもん~っ!!」
オレは、腕で自分のほおをぬぐった。
右手をコートのポケットにつっこんで、小さな箱をとりだす。
一歩。二歩。坂をおりて。
綾の手のひらに、箱をのせた。
「……綾。メリークリスマス」
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