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「……え?」  鼻をすすりながら、綾はぼんやり箱を見つめている。  のろのろと、てっぺんにむすばれた赤いリボンをほどきだす。  街灯に、銀色の指輪が照らされた。ダイヤモンドの小さな粒が光っている。 「……ウソ……。これ……本物……」 「……本物だよ。言っとくけど、意味、重いぞ」  綾が目を見開く。問いかけるように、オレの顔を見あげる。  オレは、腹に力を込めて、その瞳を見おろした。 「給料の三ヶ月分……には、だいぶ届かないけど。しょせん、ガキのせいいっぱいでしかないけど……。けど……それでも……。綾、この先もずっと、オレといっしょにいてくれますか?」  声がみっともなく震える。 「う……うんっ!」  綾の目から、涙がぽろっとこぼれた。 「あたし、ずっと、ヨウちゃんといっしょにいるっ!!」  細い左手が、オレの前にのびてくる。  その薬指に、指輪をはめていく。かじかんだ指が、震える。 「……やっぱり、ゆるいな」 「いいの。おとなになったら、ちょうどよくなるから!」  目にいっぱい涙をためて、綾は「ふふ」と笑った。 「ね、ヨウちゃん! あたし、ヨウちゃんの売約済みっ!!」  雪は、ふわふわと夜空に舞って。  街灯の明かりに照らされて、オレは綾を抱きしめた。
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