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そういう状況下、颯天は少しだけほかのメンバーと立ち位置が違う。 その気配は入ったときから感じていて、最初は自意識過剰だろうと思っていた。 やたらと先輩たちから素性を訊かれることが多かったが、同時期に入った新人たち五人と学生食堂で昼食を取りながら話したときにその理由がわかった。 EAが何を基準にスカウトするのかは皆目わからないが、通常は幹部の指示を受けて人事班のメンバーがスカウトに動くらしい。 颯天だけが、幹部も幹部、代表である祐仁がじかにやってきて勧誘した。 つまり、颯天は最初から祐仁に特別扱いをされている。 ゆえに、自意識過剰などではなく、颯天はメンバー全員から見張られているのだ。 羨望(せんぼう)、あるいは嫉妬の念を持って。 時生は『妙な雰囲気』を感じていると云うが、颯天から見ると妙に閉塞(へいそく)感を持った、気軽に口にはできない組織のように思える。
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