第1章「偶然の出会い」

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「いっただきまあす」 相変わらず、旨そうに食いやがる。さすがに俺も食が進む。 「裕ちゃん天才。全部おいしいよ」 「おだてたって、これ以上何も出んぞ」 こうして誰かと自宅で食事をするのも何年振りだろうか。心地よい雰囲気を味わいながらも、何でこいつと飯を食ってるんだと、ふと我に返った。そして朝聞けなかったもうひとつの疑問をぶつけてみた。 「俺は初対面の奴からは大抵怖がられるんだが、お前は真逆なんだけど、どうしてなんだ?」 「お父さんみたいだからかなあ」 「ああ、お父さんか」 想定内の答えではあったが、少し残念な感情も湧いてきた。まあそうだよなと自分を諌めている気持ちを見透かしたかのように、 「あっ、怒ってる?」 「怒ってないよ」 「本当かなあ」 こちらの顔を覗き込んでくる。 「本当に怒るぞ」 「ごめんなさい。パパ」 完全におちょくってやがる。
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