第1章「偶然の出会い」

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いわくつきの物件だとは思っていたが、まさかの状況に愕然とした。 きっと人形か何かだろう。 いや、酔っぱらいに違いない。 それとも、死んでる? 恐る恐る近づいて行った。 どうやら若い女のようだ。 普段は神も仏も信じていないが、この時ばかりは神に祈りを捧げた。 「アーメン、南無阿弥陀仏、南無妙法蓮華経」 意を決して肩を叩いてみた。 「おい、おい、大丈夫か」 すると、目を覚ましたようだ。ホッと胸を撫で下ろしたその瞬間、 「おなかすいた」 「何、何だって?」 予想外の第一声に、思わず二度聞きしてしまった。 夜も遅いし、事情も聞きたいので、その女を家の中に引き入れた。 とりあえず何か食べさせよう。話はそれからだ。 ガツガツガツ モグモグモグ ゴホンゴホン 丼めしを高速で口の中へかきこみ、吐きそうになっている。 「ちょっとお前、落ち着いて食え。誰も取りやしねえから」
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