第4章「渡したいもの」

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中を開けてみると、高級そうな包丁だった。 「いろいろ迷ったんだけど、やっぱり裕ちゃんにはこれかなっと思って」 「だけど、名前入りって、昔のテレビショッピングじゃあるまいし」 「お気に召さなくて!」 「いや、大事に使わせて頂きます」 思わず二人とも笑いが込み上げてくる。 「何か馬鹿みたいだね、私達」 「よし、飲み直そうか」 「今から?明日は仕事だよ」 それから、深夜まで二人だけの祝いの宴は続いた。それまでの事が嘘だったかのように。 結局そのまま二人とも眠ってしまったようだ。 「裕ちゃんさん、お姉ちゃん、遅刻するよ。じゃあ、行ってきます」 「今何時だ?」 「もう10時だよ」 「あいつわざと起こさなかったな!」 「それだけ怒ってるってことだよ」 「そんなことより、早くしないと本当に遅刻だぞ」 平穏な日が戻って来たのはいいが、ドタバタ劇はまだまだ続きそうだ。
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