第6章 「黄昏時」

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オーナーと祐衣の件が一段落して、平穏な日々が戻ったのだが、何故か気が抜けたような俺と祐美であった。 特に休みともなると、何もやる気が起こらない。 「祐衣はどこかに行ったのか?」 「オーナーとお台場に行くって言ってたけど」 「楽しそうだな」 「そうだね」 会話も続くこともなく、まるで老夫婦のようだ。 「ねえ、私達もどこか行かない。このままだと急激に老け込みそうなんだけど」 「どこかってどこだよ?」 「ちょっと行ってみたい所があるんだけど」 そう促されて、出かけることになった。 そこは、浅草の花やしきだった。 「渋いセンスだな。普通来ないだろう?」 「子供の時に家族でよく来たんだ。何か懐かしくって、また来てみたかったの」 そう言えば、子供の時からこいつはいろいろと規制されていて、数少ない思い出のひとつなんだろうと思うと、感慨深いものがある。 「そうだ、ジェットコースターに乗ろうよ」 「あれは子供が乗るやつだろう」 「あ、怖いんだ」 「馬鹿なことを言うんじゃないよ」 「じゃあ、乗ろう」
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