第6章 「黄昏時」

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さすがに大声は出さなかったものの、終始顔が硬直している俺の様子に、祐美は大笑いしている。 「本当に裕ちゃんって、見かけと違って怖がりなんだね」 「やかましいよ。誰が怖いなんて言った?」 「じゃあ、今度はお化け屋敷に行こうよ」 「すみません。もう勘弁して下さい」 上機嫌な祐美を見ていると、何だか気持ちが和んでくる。 おもむろに、裕美が囁いてきた。 「私達って、他の人からはどう見られてるんだろう。やっばり親子かな?」 「この歳でこんなとこ来る親子がいるか?」 「じゃあ、社長と愛人かな」 それでもおかしいだろうが、どうしてもそういう発想になってしまうようだ。 「愛人と言えば、奥さんとは何が原因で別れたの?裕ちゃんの浮気、それともDV」 「何でそうなるんだよ」 どうしても理由を聞きたいようなので、仕方なく答えた。 「俺はこういう短気な性格で、あいつはそれを理解してくれる良い妻だったんだが、あまりにも俺に対する鬱憤が溜まったんだろうな。ある日、俺が帰ってきたら、知らない男がいてさ。でも俺はあいつを責めることはできなかった」 あまりのことに、少しの沈黙の後、
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