第6章 「黄昏時」

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「裕ちゃん、ずるいよ。奥さんが可哀想だよ」 「お前の言う通りだ。あそこで俺が怒鳴り散らせば良かったんだよな。でも、もうお互いに心が離れてたのかもしれない」 「私みたいにすぐぶつけられたら良かったのにね」 「でも今じゃあ、結婚してる時より何でも言える間柄にはなったんだけどな」 俺の言い回しが気になったのか、 「けどって?」 「また離婚したって、連絡なかったからな」 「そりゃそうでしょう。奥さんにだってプライドがあるんだから、自分からは言い出せないよ」 どこ目線で語っているのかよくわからないが、気持ちは理解しているようだ。 「だから、お前が心配している復縁なんてないってことだ」 「いつ私が心配なんかした。馬鹿なんじゃないの」 この前酔っぱらって言ってたくせに、忘れているのか照れ隠しなのか、そうこうしているうちに日が暮れかけてきた。 「そうだ。今日この近くで花火大会があるって」 川沿いに近づくにつれて人が集まってきている。
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