第1章「偶然の出会い」

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これは新手の詐欺かもしれないと勘ぐってはみたが、少し涙ぐんでる姿を見ていると、少しは信じてみようかと思った。 喧嘩っぱやいが、お人好しなのが俺のキャラクターだからしょうがない。 とはいうものの、どうしたもんだろうか。 「切符代なら出してやるから、実家に帰りな。お母さんも心配してるだろう」 「絶対帰らないもん」 「そんなこと言ったってどうするんだよ」 「いざとなれば、女っていうことだけで働けるとこもあるし」 「おいおい、早まるな」 なんでこいつのことを心配しなきゃならんのだ。 そんな言い合いをしてる最中、携帯にメールが届いた。それは今日約束していた面接の確認メールだった。14時だと思っていたら、12時だった。もうそろそろ出ないとまずいな。 「あ、すまん。これから出掛けないと」 「話まだ終わってないのに、どこいくの?」 「面接の時間がもうすぐなんだ。なにしろ新しくオープンするレストランで、料理長探してるっていうんだ。なかなかいい話なんで、これで決めないと」 しまった。何をべらべらとしゃべってんだ。
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