ワンコイン侍

3/6
0人が本棚に入れています
本棚に追加
/6ページ
「ここです。三日前の夜、花火を見に行った帰りにこの廃墟の前を通った時です。黒い何かが、私の親友を廃墟へとさらっていったんです。あれは人では無かったです。目が黄色く光っていたし、身長も八尺はあるような大さでしたから…」廃屋敷の周りはもはや藪が林へとなり、鬱蒼としていて人々に“近づくな!”と言わんばかりであった。 「うむ、では中に入るなんし。娘さん、貴方にはそのご友人を判別してもらわんといけんし。私が誰にも指一本も触れさせんので、安心してくなんし。」 三人は門を抜けて、廃屋敷の戸を開けて中へと入って行った。中に入るとそこは六十畳ほどの大きさのまるで剣道場のような板貼りの一室だった。屋敷の中は特に荒れておらず、物の一つも無くてそのギャップはどこか違和感を感じさせるのであった。 「ここは二十年くらい前までは名のある剣術道場だったなんしが、師範と門下生十数名が一夜にして行方不明になったので放置されてたんしよ。そんな事があったから不気味がって誰もここには近付かないし、誰も住もうとはしなかったんし。数年もすれば荒れて来るし、皆もそんな事があった事もだんだんと忘れていくし…。まぁ、私にとっては好都合であったがね☆」剣豪はピシャッと戸を閉めると長々と語ってみせた。語っているうちに背は八尺五寸まで伸び、髪はバサバサと腰ほどにまで伸びて、後頭部からは一本の一尺はあろうかとゆうツノが斜め上に生えて、目は黄色く光ってギラギラしていた。 「えっ、どう言う事…」娘は状況を理解しきれていなかった。     
/6ページ

最初のコメントを投稿しよう!