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暗闇の中、前を飛ぶ先輩に聞いた。
「今日……今日、私たちが迎えに行くのは……誰なのでしょうか」
知りたかった。これから行く先のことを。
「さぁな、知らんよ」
「やはり、そうですか……」
「俺達は、与えられた仕事だけをすれば良いんだ。違うか?」
「はい……その通りです」
体も羽も、何もかも凍りそうな程冷たい風を切り分けながら答えた。この仕事に私情を入れてはいけないと、何度も何度も聞かされていた。だから……
「着いたぞ」
先輩の言葉が、私を現実に戻す。そこは、もう夜の遅い時間だと言うのに、眩しい光を外に漏らしながら録り貯めていたビデオをみている、大柄の男の部屋。
その隣。
明かりも何もない。完全な闇に包まれた部屋。月明かりのあるこの夜空の方が明るいと思わせるほど、暗く冷たい部屋。
こんなところに人間がいるとは思えない程暗く、ガラス張りの窓を覗けば、そこには山となるいくつものゴミが散らかり、綺麗に片付けられていた隣の部屋とは同じ形の部屋ではないと思わせるほど違う。
「ここ……なのですか? 先輩」
私たちの仕事は、人間と会うことが必要。だけど、これほどまで散らかり、足場の無い部屋のなかに……
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