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それは、人が通る大きさでなく。巨人が通れるのではないかというほどの扉。その扉の天辺は、闇に消えてしまってるのか、それとも本当に無いのかすらも分からない。
「さて……俺たちの案内はここで終わりだ」
「ごめんなさいね。私たちはこの先に行っては行けないの」
行かせたくない。その気持ちはあった。けれど、それは許されないこと。なら、せめて優しい笑顔で送り出そう。
それは、私ができる唯一の優しさなのか。それとも、この後にこの子を襲う悲劇を知りながらも、それを知らないふりをして罪の意識から逃げ出すためのものだったのか、今になってはもう、分からない。
「ここから先は一人だ、行けるか」
「うん! 大丈夫だよ」
私の手から離れた彼女は──何も聞いていないのに──その扉に近づく。扉は音もたてずにゆっくりと、ゆっくりと開き、その先も見えない闇を見せた。
「それじゃあね! バイバーイ!」
と、小さな手を大きく降りながら、開かれた扉の中に入っていった。
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