7月27日 am9:52

3/23
前へ
/459ページ
次へ
 武士の体と玄関のドアまでの距離と隙間を睨みつつ、でも、家に入ってしまえば万事済む話だろうかと、どこからともなく着眼点の歪つさに気づき、そこでようやくボクは立ち止まったのだ。  家に入る入らない以前に、玄関前に武士が立っていたとあれば、ご近所様は一体どう勘ぐるのだろう。   冷静に考えればごく当たり前の疑問。それがすぐに思い浮かばない時点で、ある種の異常心理にとらわれているという証拠だ。  困った時には頭をかく癖がある。ご多分に漏れず頭をかこうとして、手から下げていたビニール袋がシャララと鳴った。目を向けると、丸いプラスチック製のケースが2つ入っているのが見えた。
/459ページ

最初のコメントを投稿しよう!

13人が本棚に入れています
本棚に追加