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訪問者
チャイムの音で目が覚めた。真夜中だ。夢の続きかと思った。また寝ることにした。
続いて、またチャイムの音がした。どうやら来客らしい。やれやれ、こんな時間に誰だろう。俺はスマホの画面を一瞬つけて、目に時刻を焼き付けた。午前2時32分。こんな時間に。非常識な奴だ。
俺が電気をつけて、寝ぼけた頭を抑えていると、急かすようにまたチャイムが鳴った。俺は立ち上がってしばらく歩いて、玄関へと歩いていった。まだ頭がぼんやりしている。
モニターつきのインターホンのボタンを押すと、モニターの向こう側には白い顔が現れた。
「……どちら様」
俺がモニター越しにかすれた声で呟くと、白い顔がこちらを向いた。
「俺だよ。Aだよ」
白い顔が不安そうな、はっきりとした声で名乗った。俺は寝ぼけた眼を擦った。Aは学生時代の友人だ。社会人になった今でも、たまに連絡を取り合う仲だ。ついこの間も、会社の愚痴を言い合いながら飲んだ記憶がある。
「……こんな時間にどうした」
不機嫌な、寝起きの低い声で俺が尋ねた。
「実はさ、やばい事になったんだ。ちょっと一緒に来てくれないか」
白い顔のAが言う。
「……明日の朝じゃダメなのか」
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