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「怖いけど、お父さんのため……」
ヴィムは勇気を出して手首を切ると、コップの中に血液を垂らした。
はやく溜めねばと、何度か切り傷を作ってコップを半分まで血液を垂らすと、父親の寝室に駆け込んだ。
「ヴィム!遅いじゃないかい!」
怒鳴りながら振り返る母親にも既に感染し、青あざだらけになっていた。息も荒い。
「ごめん、お母さん。でも俺が助けるから」
ヴィムは父親を抱き起こすと、血液を半分飲ませた。
すると青あざがすぅーっと消えていく。
「ヴィム、これは?」
「説明は後!お母さんも飲んで」
ヴィムは母親に残りの血液を飲ませた。こちらも青あざが消えていく。
「よかった、助かって……」
安心して涙を流すのも束の間、父親はどす黒い血液を吐いて息絶えた。
「お父さん!?」
母親もどす黒い血液を吐き、目を見開いて倒れた。
吐き散らかされたどす黒い血液は、お世辞にも鮮血とは言えず、固まりかけの血液のようにドロドロとしていた。
「そんな、なんでなんで?どういう事!?」
ヴィムは自室に戻ると、今では誰もが所持している、青の伝承を引っ張り出した。
「エルフの生き血、エルフの生き血……。あった!」
ヴィムはエルフの生き血について書かれているページを開いた。
“エルフの生き血を飲んだ者は不老不死になる。不死者の血液はエルフと同じく、青くなる。しかし不死者となった者の血液を飲んだ者は、本来の血液が拒絶反応で凝固し、死に至る”
「俺はなんて事を……」
不死者となったヴィムは両親を殺してしまった罪悪感と、これから続く生き地獄に絶望した。
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