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日が傾きかけた頃、村の外へ働きに行っていた父親が帰ってきた。
大きな背中に薄汚い男を乗せて。
「あなた、その人は……?」
「帰りに道端で倒れていたんだが……、もう死んじまったよ。今から墓を掘る、ヴィムを呼んできてくれ」
「えぇ、待ってて」
母親はノックもせずにヴィムの部屋に入った。
「うわっ!?ど、どどど、どうしたの!?」
唐突に部屋に入られ、どもるヴィム。
「まったく、これくらいで驚いてどうすんのよ……。そんな事よりお父さんのお手伝いしてきなさい」
「手伝いって、何を?」
「墓を掘るのよ。お父さんが仕事帰りに倒れてた人を担いできたんだけど、お亡くなりになったの」
「お、お墓……。がんばるよ……」
ヴィムは遺体を見るのを怖いと思ったが、それよりも慈悲の心が勝った。
ヴィムはスコップを2本持って父親と共に、村の最奥に行った。
そこにはエルフの祭壇があり、その横は村人達の墓地になっている。
「よし、ここらでいいか」
父親は村人達の墓地から少し離れたところに、遺体を下ろした。
(この人、病気だったのかな……?)
ヴィムは横たわった遺体を見て思った。
遺体の所々に、青あざがたくさんある。
ふたりは墓穴を掘り始め、ヴィムはある事に気づいた。
父親の逞しい腕に、真新しい引っかき傷の様なものがあった。
「父さん、その傷は?」
「ん?あぁ、さっき下ろした時に遺体の爪が擦れたんだ」
父親は傷を確認すると、何食わぬ顔で言った。
「ええっ!?それ、街のお医者さんに診てもらった方がいいよ!この人、きっと病気だったろうし……」
「ヴィム、お前はなんでこの人が病気だったと思うんだ?」
父親は神妙な顔をして言う。
「なんでって……。こんなにあざがあるから、病気でそうなったんじゃないかって……」
「崖から落ちたのかも知れないだろ?学もないのにそんなことを言うな」
父親は冷たく言い放つと、黙々と穴を掘った。
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