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「……家の中に入って待ってろ」
男は家から出ると、エルフの娘の背中を押して家に入れた。
「いいか、俺がいいと言うまでここを開けるな。顔を出すな」
男は一方的に言うと、ドアを閉めてしまった。
「助かった、のかしら……?」
エルフの娘は小首を傾げ、ドアの隣に座った。
一方男は、外に出るなり村の近くにある森の前まで来ると腕を組んで森を見つめた。
その森には獰猛な獣がたくさんいるため、“獣の森”と呼ばれ、誰も近寄ろうともしない。
しばらく男が立っていると、いくつもの松明の灯りが近づいてきた。
賊だ。
「おい、そこのお前!ここで何をしている!」
賊のひとりが1歩前に出て叫ぶように尋ねた。
「なぁに、エルフの娘っこが助けを求めに来たモンだから、獣の森に押し込んでやったのさ。今日生きるのですらやっとの村に、危険を犯してまで匿えなんざ、とんでもない。そろそろ図々しいエルフの悲鳴が聞こえないかと、待ってるだけさ」
男はそう言ってゲラゲラ笑った。
「じゃああのエルフはこの森の中だな?お前ら、行くぞ!」
賊達は松明を掲げ、「おぉーっ!」と声を上げて森に入ろうとした。
「悪い事は言わねぇ、やめときな!」
男が声を張り上げると、賊達は一斉に振り返った。
「なんだよ?」
「本当はエルフを匿ってるんじゃないのか?」
彼らは不機嫌そうに、ジリジリと男に詰め寄った。
「何も命を粗末にする必要はないだろうよ。この森には獰猛な人喰い獣がうじゃうじゃいるんだ、いくらアンタらが松明持とうが銃を撃とうが、かないやしないさ。別のエルフを探しに行った方がよっぽど賢明だ」
男が話している途中、森から獣の遠吠えが聞こえた。
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