ヒトの孫

8/8
前へ
/8ページ
次へ
もう一度、始めてみたかった。せっかく、どんな形であれ会えたのだから、もう一度ヒトの孫として歩みたい。でも村は燃やされて、もう戻れない。この集落ではヒトはいい顔をされない。どこへ行こう。どこへ行けるだろう。私と祖母が居られるところ。 「都会だ。」 私はトランクから買い出してきた品物を放り出す。そして、受け取った交通費の残額を確認した。まだ余裕がある。都会まではいかなくとも、中間の町までなら二人で移動できる。 「ごめんなさい…。」 右手にトランクを抱え、左手で祖母の手を握る。私たちはこっそりと新しく歩き始めた。
/8ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加