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どの世界も真夜中は静かなものだな、と思う。
俺の首根っこを掴んでいる女が「困ったな……」と片手で頭を掻いていた。
俺は変な女に拉致されて、次々と変な世界に連れていかれている。
しかも、この女は不思議な力を持っているようで、行く世界行く世界で超常現象を起こしていた。
俺が今いる世界は何個か行った世界の中で一番元いた世界に近いが、一番異様に見える。
道には街頭が並び、黄色や赤が点滅している信号機。俺たちが今いる場所は錆びた玩具が沢山置いてある公園らしき場所だ。
でも、ここにいる人々――沢山いる子供たちに生気がない。
そもそも、こんな深夜に子供が外にいること自体おかしいが。
奇異の目で俺たちを見ている。
「大丈夫だって! メイは健康だから心臓とられたくらい何とかなるって!」
何処からか笑ってそう言う声が聞こえてくる。
俺は怖くなって「にゃ……」と変な女を見た。幾分傍にいる時間が長い分、女の方が安心感がある。
「何から説明したらいいかな……」
俺は人間の言葉が喋れないのに、この女には俺の言葉がわかるらしい。
「基本的に世界は丸いって知ってる? でも、この世界は珍しく平面で、自転もしないの」
ただし、俺にはよく理解できない話をする。
「それで、ここは陽が当たらない場所。この世界の裏側で、文字通り日光とは無縁の場所だから、自然と身分が低い人たちが集まってる」
なんとなく、最後の言葉だけはわかった。俺たちの世界も弱いものが陽当たりの良い場所で昼寝をすることは許されない。
「だから、ここから早く出て行きたいね」
女は俺に顔を近づけて、にこーっと笑った。
ずっとこの女は勝手に物事を進めている。
俺は「にゃっ!」と女の顔を引っ掻いた。女は「きゃっ」と驚いて、狙い通りに俺を手放す。
俺はその場から走って逃げた。
ここは妙に不気味だが、俺の住んでた町に似ている。住んでたって言っても一年にも満たないが。
訳のわからない女に訳のわからない場所へ次々と連れ回されるよりは、まだここに留まった方がマシかもしれない。
しばらく、ふらふらと歩いてみることにした。
「あっ、猫だ!」
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