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草木が眠る午前二時を過ぎても、街中のコンビニは煌々としていた。
自動ドアが開く軽やかなメロディと共に、三笠亞招{みかさ あまね}は店内に入った。
真夜中なのに客が数人いる。だが金曜日の夜(日付的には土曜日)、都会のコンビニは大体こんなものだ。白夜の国さながらに、この街は眠らない。
店員は一人だけ。まだ若そうな男性店員が、一台のレジで懸命に対応している。
もうひとつのレジ台は無人だ。「恐れ入りますが隣のレジをご利用ください」と書かれたプレートの横に、小さな箱――募金箱が置いてある。
おあつらえ向きだ、と三笠亞招は思った。
三笠亞招は迷いなく、その「難病に苦しむ少女に愛の手を」と書かれた募金箱に向かいーージャララッ。
ひとつかみの小銭を、募金箱に落とした。半分程度だった透明な募金箱の中身が、一瞬で満杯近くになる。
三笠亞招は即座に踵を返し、来た時と同様、颯爽と店を後にした。
背後から、男性店員の、「……あ、ありがとうございました……?」という戸惑った声が聞こえてきた。
真っ暗な道路に戻ると、三笠亞招は斜めにかけたがま口型のバッグの口を開けた。中には一円玉から五百円玉、全種類の小銭がぎっしりと詰まっている。
あと何件コンビニを回れば、全部無くなるだろうか。
……二十件ほどか、と目算した。
朝にはすべて処分できるだろう。三笠亞招はヒールの靴音を鳴らして、冷たい秋風が吹いて濃い宵闇が支配する街を、次のコンビニ目指して歩き出した。
この大量の小銭を、彼女はすべて処分しなくてはならない。
何故なら三笠亞招は、殺し屋だからだ。
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