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死ぬな!青木
「血ガス!血算!生化!」
手術室に代官の声が響き渡る。
血ガスとは、呼吸器系の機能障害を調べるために動脈内のガスを分析すること。
血算とは、赤血球と白血球の量から貧血の度合いを調べること。
生化とは、血液中の酵素から肝臓・腎臓の機能を調べることだ。
医者たちがテキパキと患者に装置をつけていく。患者は20代の男性だ。
雑賀がTAEを行っている。
出血部位に近い末梢血管までカテーテルを進めて止血することだ。
「サチュレーション!89!」
最若手の雑賀ケントが叫んだ。
赤いランプが点灯する。
サチュレーションとは動脈内の酸素飽和度だ。
100から95が正常でグリーン、95以下になるとイエローのランプが点灯し、90以下になるとレッドのランプが点灯する。
「意識レベル300、VF」
女医の畠山美咲が険しい表情になる。
意識レベル300は意識不明の状態を表し、VFは心室細動…………死の危機が迫っている。
「青木さん!しっかりして!」
畠山美咲が叫んだ。患者の青木マコトは刑事だ。何者かに銃で撃たれた。
シルバースターって派遣会社で銃撃戦に遭遇し被弾したそうだ。
外傷により心臓と心臓を覆う心外膜の間に血液が溜まり、心臓の動きを阻害している。
医療用語で『心タンポナーゼ』という。
畠山美咲が電気ショックを施す。
ビリリリリ!ビクンッ!!
青木が電撃により跳ね上がる。
しかし、意識レベルもサチュレーションも変わらない。
美咲はSickoの恐ろしさを誰よりも知っていた。医療問題はテロよりも恐ろしいのだ。
日本はフリーアクセスだ。イギリスは患者自身が病院を選ぶことは出来ない。
このパラドックスを解決するには高齢者が健康でいられることなのだ。
白い巨塔時代には大学医局が就職情報を握り、教授に逆らうと転職も出来なくなったが、バチスタ時代には新人医師が病院を選べるルールになった。2004年に新研修医制度が発足したことによる。イヤな時代になったもんだ!
だ・か・ら、ゆとりはキライなんだ!
美咲は雑賀ケントを横目で睨みつけた。
「ボーッとしてんじゃないよ!」
「スミマセン!」
そのとき!手術室の自動ドアが開き、爽やかな男が入ってきた。ブルーの手術着を纏っている。
「北川!」
美咲の最大のライバルだ。
「彼女の命、俺に預けてくれ」
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