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カレーを作ったあとはすぐに鍋から取り出し、いつものように保存用と翌日の弁当用にタッパーに分けて冷蔵庫にしまう。
そしてカレーと同じタイミングで炊けたご飯を食器によそい、できあがったカレーをかける。
見た目は丁度いい感じにとろみがついていて実に美味そうだ。
あの苦みもご飯と一緒に食べれば気にならなくなるはずだ。
そんな希望を抱き、私はカレーを口の中に運んだ。
その瞬間、私はそんな希望的観測になんの意味もなかったことを、口の中に広がる苦みと一緒に思い知らされることになった。
苦い。やっぱり苦い。ただただ苦い。
カレールーを足してもビールの苦さは全く緩和されておらず、それどころかカレーのスパイシーさが苦さを引き立たせ、更に苦みが引き立っているようにすら感じる。
具材はよく煮えて丁度いい柔らかさになっていたが、ビールの苦みが染みついてしまっていて野菜の甘さとビールの苦みがかみ合わずに不協和音を奏でているようだった。
二缶も加えたビールは野菜の旨みなどを苦さで完全に上書きしてしまい、できあがったカレーをコクがなく、ただ苦くて辛いだけのものにしてしまっていたのだ。
これは不味い。今まで作った料理でも特盛に不味いと、私は頭を抱えた。
料理を作って失敗したのはこれが初めてではない。
ゆで過ぎて余ったパスタをこねてピザ生地を作ろうとしたらピザとは似ても似つかないボソボソした小麦の塊ができあがってしまったり、トマトスープを使ってトマトリゾットを作ろうとしたら水を入れ過ぎてトマトの味が全くなくなってしまったり、そんな失敗は少なくない。
だがそれ等の失敗した料理はなんとか食える範疇に収まってくれたが、これはその範疇を越えてしまっている。本気で食べるのを拒否したくなるレベルだ。
危機感を感じた私はなにか甘さをプラスすれば苦みを緩和できるのではと思い、救いを求めてお好み焼きソースを手に取り、カレーにかける。
しかし結果は焼け石に水で苦さはどうにもならなかったが、それでもないよりはマシだとソースをかけたカレーを無理矢理口の中に流し込んだ。
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