ビールの行方

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 目の前の危機をなんとか退けたが、まだカレーは明日の弁当の分を含めて二日分程度は残っている。  これは忌々しき事態だった。  荒野の中をさまようような殺伐とした仕事の中において、休憩時間は唯一とも呼べる心のオアシスであり、癒しの時間だ。  だがそんなときにこのカレーを口にしてしまえばオアシスの中で遭難するような絶望を味わい、勤労意欲を完全に粉砕されかねない。  このカレーをなんとかしなければならない。  そんな使命感に駆られた私は先程タッパーに保存したカレーを再度鍋に戻して火をかける。  そしてまた救いを求めてお好み焼きソースをカレーに投入して煮込む。  先程よりは少し苦みは減ったがやはり焼け石に水で効果は薄い。  そこで半分自棄になった私は目の前にあったごま油をカレーに投入するというどう考えても無謀な試みを決行する。  その結果、カレーの味はより混迷を極めてしまい、私はいよいよ追い詰められた。  このカレーと言うにはあまりにも難がある代物を、翌日以降も食べられる自信はなかった。  ならば、せめてこのカレーを今日中に処理するしかあるまい。  そう思った私は、覚悟を決めて食器に新たなご飯をよそった。
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