とある大学生と猫

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とある大学生と猫

「ありがとうございましたー」  深夜バイトの男の疲れ切った声に見送られて、彼は店を出た。ゆったりと元の位置に戻って行ったガラス戸が、背後でガツリと音を立てて閉まる。コマーシャルでも流れている明るい独特のBGMは、それでも外まで聞こえていた。  ザリザリと500円のサンダルの底を鳴らし山沿いの道を住宅街へと向かって歩きながら、彼は大きく息を吐いた。  曇天で月明りすらも無い暗い夜道に、ただ虫たちの合唱だけが木霊する。時折思い出したように通り過ぎる風は、どこか冷たさを孕んでいた。もう、秋だ。  携帯を開き、SNSを流し見る。たまたま目に入った友人の書き込みに、彼はまた一つ息を吐く。  『やっと就職決まった!後期までもうあんま時間ないけど、これで遊べる!!』  コメント欄には、『おめでとう』『お疲れ』という文字が並んでいた。時々見知った名前があって、その下には『これでやっと遊べるな!!』という文字が踊っている。友人はその1つ1つに『ありがとう』と律儀に返していた。  『おめでとう!ホントにやっとだな笑 俺も人のこと言えないけど……。まだ休みはあるから、思いっきり遊べよ!!就活お疲れ!!!』     
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