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2. 羽をもつ者ともたない者
「おおい、ニソル!」
大きく伸びをしながら家の外に出たニソルの頭上から声がかかる。見上げると、広く伸ばされた枝の隙間をぬうように顔なじみが二人飛んでくるのが見えた。そのうち一人が太い枝の上にふわりと音もなく降り立つ。
「おはよう、クンネ。ウナも」
「やあ、ニソル。今日は朝寝坊でもしたのか?ふわふわの髪がますます跳びはねているよ」
ウナと呼ばれた青年はニソルのはね返った白い毛先をつまんでからかうように言った。肩のあたりでゆったりとひとまとめにされたウナの髪は灰色で、くせがなくつやつやと光っている。背中には乳白色に透ける四枚の羽がゆらめいていた。
「ニソルはいつだって寝ぼけているようなもんだろ」
黄色のくちばしが目立つ黒く小さな鳥が、ぱたぱたと羽ばたきながらヒトの形に姿を変えた。短い黒髪に、少しつり目の青年だ。
「クンネ、ニソルに意地悪を言うなよ」
「だってそうだろう? 花に本気で恋をするなんて、それもよりによって夏の一夜しか咲かないヤツにだなんて馬鹿げてるよ」
「クンネ!」
ウナがたしなめるようにクンネの腕を掴んだ。そんな二人を見てニソルは困ったように笑う。
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