2. 羽をもつ者ともたない者

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「花は俺たちとは違う。ほんの短い間しか一緒にいることができないじゃないか。あいつらだってそれをわかっているから、普通は『一夜限りの関係』でいるんだろう?」  クンネはあきれたように続ける。 「あいつらはできるだけ多く、遠くに<種>を運んでもらうために甘い香りを振りまいて俺たちを誘う。そのためにお互いに割り切って楽しめばいいと思っているんだ。恋なんかしたって無駄だ」 「そんなこと言うなよ。いいじゃないか、それでニソルが幸せなら」 「でもニソルに羽が生えないのは、ほかの花たちから蜜をもらっていないからじゃないのか? お前たちの成長に必要なものなんだろう?」  ウナはちいさくため息をつき、ニソルの肩に手を置いた。ウナの気遣わしげな眼差しに、ニソルはまた控えめに笑うことしかできない。 「……クンネは素直じゃないな。ニソルが心配なら、そう言えばいいのに」 「な、なんでそうなるんだよ!」  慌てたように身を引くクンネの手をニソルがそっと握る。 「クンネ、心配してくれてありがとう。でもね、僕はセラのことが大好きなんだ。それだけじゃない。僕の命を助けてくれた恩人でもあるんだよ。だから僕はいつまでも彼のそばにいたいし、一年にたった一夜でも触れ合いたいって思うのは彼だけなんだ」     
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