2人が本棚に入れています
本棚に追加
「っはあ!はあ、はあ…あ…」
荒い呼吸で飛び起きた。
体中にぐっしょりと汗をかき、喉はカラカラに乾いて口の中に舌がはりつく。
夢、なんという悪夢だろうか。
先ほどまでの恐怖を思い出し、寸でのところで現実に引き戻されたことに安堵した。
外からわずかに聞こえる鳥の鳴き声に、なんとか息を整えようと胸を摩る。
今何時だろうかと時計がかかっている壁に目をやるが、時計は見えない。
いやに部屋が暗いのだ。
隣で妻が身じろぎをする気配を感じ、起こしてしまったかと顔を伺おうとするが、
暗すぎてその顔も見えない。
「…?」
暗い。真っ暗だ。
ベッドサイドのデジタル時計の画面すら。
カーテンの隙間から差し込んでいるはずの日の光すら。
ふとんを握りしめる自分の両手すら見えない。
全身がぞくりと震えた。
何も見えない。
真っ暗な、闇の中にいる。
「いや…そんなわけ、ない。そんなわけないだろう。あれは夢だ。夢…ただの夢…」
全部夢だ。奪われた?そんなこと、あるわけない。
ああ、そうだ。
きっとまだ、夜中なのだ。月の光も届かない、暗い暗い真夜中なのだ。
そうだろう?
なあ。
最初のコメントを投稿しよう!