追悼の日

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理由は分からなかったが、特に大事件がなくても私にとっては日々の生活というのは疲労させられるものだった。 私は自分の心が人よりもひ弱な気がしていて、それは誰に指摘されたものでなくても、私の心に罪悪感として沈殿していた。 しかしこの場所では私のそういった弱さも許されている気がした。 私にとっての安息所が壊される。 それはただ単に建物が取り壊されること以上に、安息所の死を意味し、私はひどく憂鬱になっていた。 取り壊された教会は、また別の所に新しい教会が建つらしいが、今の教会が壊されると共に牧師も老齢のために引退をする。 新しい教会には信徒ではない私が出入りできるとは考えづらかったし、また同じような感覚を得られるとも限らない。 翌日には出張でしばらくの間、遠くに行く私にとっては、最後の別れであった。 真夜中の二時頃だというのに、空は薄明るく赤紫色に湿っていた。 もうすぐ古びた教会が見えてくる。 私は重い足取りで歩んでいった。 元は真っ白であったであろう壁を指でなぞっていくと、ざらざらとした感触がした。 もしかしたら、何かしらの示しがあって老牧師がいて教会が開いてないだろうかと一抹の望みを抱いていたが、木製の扉は重く閉じられていて、中からは確かに鍵が掛かっていた。     
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