追悼の日

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私は落胆をしながらも、額を扉につけて、目を瞑った。 脳裏に確かにあの静かな礼拝堂が浮かぶ。 十一年間私の人生にとっての安息所だった、それをもうすぐ失う。 私は今まで祈るということをしなかったが、私は人生ではじめて言葉にせず祈った。 それはほんの十分ぐらいだったかもしれない、いつまでこうしていても仕方がないと思い、私は目を開いた。 かたん、と小さな音がした。 そこには手の平ほどの壁の欠片が落ちていた。 私ははっとしながらもその欠片をしげしげと眺めた。 それは何の変哲もない壁の欠片だったが、いくら老朽化しているとはいえ、こんな大きさの壁の欠片が突如崩れて落ちることなどあるのだろうか。 私にはこれが何を示しているのか分からなかったし、ただの偶然かもしれない。 しかし私にとって、これは教会の形見のような気がした。 私はこの小さな不可思議なできごとに驚きながらも、気付くと微笑んでいた。 別にこの欠片は、私の小さな教会になってくれるはずもなく、ただの欠片のままだろう。 しかし私にとって何か重要な意味を持っている気がした。 私はその欠片を手の平に持ち、そっと包み込むと、もう一度目を瞑った。
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