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「かほ…」
「恭一郎、思い出したのね」
「妹はキョンって呼んでいたね。よく一緒に遊んでいたのよ」
お姉さんの言葉に、僕は何度も頷いた。
僕はどうして忘れていたんだろう。
隣の席の女の子。しっかり者で、のんびりやの僕をいつも助けてくれた。
唯一彼女が苦手だったのが水泳で。
僕は五歳の時からスイミングに通っていたから、泳ぐのだけは得意だったんだ。
夏休みに泳ぎを教えてあげると約束して。
けれど雨が続いてプールの開放日は中止になった。
「かほはプールの開放日に、キョンに泳ぎを教えてもらうのを楽しみにしていたの。でも雨で解放は中止になった。
その日、仕事でいない親にかほの事を頼まれたのに、私は少しだけのつもりで友達の家に行ったの。その間に空が晴れて、かほは一人でプールに…フェンスが破れている場所があって、そこから入ったのね。服を着たままだったから、きっと足を滑らせて…」
「僕が言ったんです」
お姉さんは僕を見て目を伏せた。
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