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「雨が上がったらプールで泳ごうって。端の方なら足も届くし危なくないよって。フェンスが破れた場所があるのは生徒はみんな知っていました。
かほは僕を待っていたんだと思います」
「恭一郎、あなたはプールに向かう途中で、半狂乱になって救急車を追いかけようとした。それで問い詰めたらかほちゃんとの約束を教えてくれたの。私とお父さんとで病院へ行ったけど、かほちゃんは亡くなってしまった。
あなたは丸三日間高熱を出して、熱が下がった時には全てを忘れていたの。
それで相良さんには申し訳ないけど、私たちはここを離れることにしたのよ」
「元はと言えば、目を離した私の責任なんです。恭一郎君に背負わせるわけにはいきませんから。忘れたままでいた方が良かったかもしれませんね」
「そんな、由香里さん」
「泉さんが毎年お線香を上げに来て下さるだけでもありがたいと思っています。もうあの子を覚えているのは家族だけになりそうですから」
「もう僕は忘れません。来年も来ていいですか?」
「ありがとう。今年は十三回忌だったのよ。もうそんなにたつのね」
僕はお線香をあげて、写真の前で手を合わせた。
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