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八月の熱帯夜―――。無風の深夜一時。
夜空を四角く切り取ったような、真っ暗なプールの水面を月明かりが照らしていた。
ありふれた二十五メートルプール。
辺りに漂う塩素の匂いに誘われて、僕は着ていたTシャツを脱いだ。
少し迷った末、ハーフパンツも脱ぎ捨てて水面を見下す。
ここまで誰にも会わなかったし、少しぐらい音を立てても近隣の家までは届かないだろう。
僕は迷いなくプールに飛び込んだ。
大きな飛沫を上げて、水は僕を受け入れた。
昼間のぎらぎら太陽のせいで温んだ水は冷たいというほどでもなく、熱くなった僕の体を冷ますにちょうど良かった。
そのままクロールで一気に反対側へ泳ぎ着く。
指先が壁に触れると僕は足を付き、ずぶ濡れの上半身を引き上げた。
瞬間、頭の上から声が降ってきた。
「いけないんだー。勝手にプールに入るなんて犯罪だよ」
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